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 蒼社川を渡り、少し歩いて、第五十七番札所・栄福寺に到着。こぢんまりとしていて、いかにも八十八ヶ所のお寺にありがちな落ち着いた雰囲気。そして参拝者も少ない。ゆっくりと自分のペースで読経ができそうだ。
 その境内に置かれているものがあった。それは木で出来た古い三輪の箱車。足の不自由な少年が巡拝していた時に使っていたもので、ここで歩けるようになり、奉納したらしい。すべての願いが叶うわけではないが、信じるこころの大切さを実感させるものである。

 栄福寺を出て、野道を歩いていく。自然を楽しめる穏やかな遍路道らしい道。その道で犬塚池を回りこみ、一度、舗装道路を横切る。その後、続きの野道を歩き続け、再び、舗装道路に出ると、遍路ではおなじみの試練が待っていた。
 ひたすらの登り。遍路地図で確認すると、次の仙遊寺は作礼山の山中にある。私とテツは仙遊寺を目指し、黙々と登り続ける。もはやコミュニケーションとしての言葉はいらない。黙って、目の前の道を登っていくだけでいい。その先に今日のゴールはある。

 そして第五十八番札所・仙遊寺に到着。山の中にあるお寺らしく、世間から隔離された独特の静けさがある。小雨の中、私はテツとともに、何人かのお遍路さんに交じって、丁寧に読経していく。私は言葉の一つ一つをはっきりと発音することを心がける。読経のテクニックを磨くより、今はこれで充分だと思う。
 納経所で納経帳に朱印と墨書をもらったあと、宿坊の場所を訊く。久しぶりの宿坊。若干、楽しみである。
 宿坊は新しく立派な建物だったが、部屋は素朴そのものだった。テレビなどの余暇を楽しむ文明の利器はなく、寝具があるのみ。板敷きの部屋は清潔すぎる感もあるが、私の抱く宿坊のイメージに合致していた。この余計なものを限りなく、そぎ落とした潔さがいい。
 とはいえ、歩き遍路への配慮なのか、コインランドリーは設置しているということだった。早めに着いたので、私は時間潰しも兼ねて、洗濯物を持って、そこへ向かった。


五十七番 

第五十七番札所・栄福寺・阿弥陀如来



五十八番 

第五十八番札所・仙遊寺・千手観世音菩薩