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 運ばれた手術室。すでに、そこには三十代くらいの男性医師がスタンバイしていた。どうやら女医さんと二人で手術をしてくれるらしい。女医さんを信頼はしているが、二人なら、より心強い。

 自力で手術台に移動すると、天井の照明がつけられる。医療ドラマで何度も見たことがある大きな丸型の照明設備。その明るい光を浴びていると、いよいよ手術を受けるという実感が湧いてくる。

 私にとって、生涯はじめての手術。かなり緊張というか、不安がある。心電図モニターから聞こえてくる「ピッ、ピッ」という音も、かなりピッチが速い。

 聞いていて、あまり気持ちのいい音ではない。骨折の手術で死ぬことはないと思うが、「ピィー」と長く鳴って、波形が直線になる瞬間を想像してしまう。

 しかし、私の不安と関係なく、手術は進んでいく。

 視界を遮るように頭に布を被され、傷口を洗浄、消毒。そして指の付け根に局所麻酔注射を二本打たれる。

 その後、傷口を縫合し、今回の手術のメイン、金属製のピンの埋め込みに取り掛かっていく。

 「キュルルルー」

 電動ドライバーが回るような音が聞こえてくる。おそらく、ピンを指に埋め込んでいるのだろうが、麻酔により感覚が麻痺しているので、痛みは何も感じない。というか、何かが触れている感覚もない。

 「もうちょい右だな。うん、そのあたり、そのあたり」

 先輩医師の女医さんに対するアドバイスが私にも聞こえてくる。若干、不安になるが、とにかく私にできるのは二人の先生を信じることしかない。

 そのうち、なぜか、ものすごく眠くなってくる。「キュルルルー」という機械的な音がやさしい子守唄に間違って変換されているかのように。

 しかし、ここで私は眠るわけにはいかない。私には自分の手術を最後まで聞き届ける義務がある。ここで寝てしまったら、頑張っている二人の先生、そして看護師さんたちに失礼だろう。

 私が懸命に睡魔と闘っているうちに、ピンの埋め込みが終了。そして私は包帯が巻かれた左手と対面。痛々しい姿だが、これでひとまず安心である。

 こうして、私にとって、生涯はじめての手術は無事に終わった。

 二人の先生、そして看護師さんたち、ありがとう。


                          「はじめての入院」につづく。