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 クルマでは決まったコースを走ることが多い。

 自宅から町工場までの片道十分ほどの通勤タイム。または内職さんを巡回する町工場トラックコース。あるいは、馴染みのお店を巡る買い物ツアー。

 同じコースを走っていると、季節の移ろいによって多少の変化はあるものの、見えてくる景色はそれほど変わらない。商店街を通り、住宅街を流し、畑のそばを駆け抜ける。

 そういう毎日の変わり映えのない景色の中、秘かに私が楽しみにしていることがある。

 それは通りから見えるワンコ(犬)の存在である。とあるお店の看板犬だったり。とある会社で飼っている会社犬だったり。

 そのワンコたちに会えるポイントに近づくと、私はほんの少し、注意を分散させ、ワンコを見つけようとする。

 『今日も、ワンコちゃん、元気だな』

 いつものワンコを見つけると、私は安堵する。逆に姿が見えないと、具合でも悪いのかなと心配になったりする。

 もう十年以上も前のことになるけれど、私の家でもワンコを飼っていたことがある。シベリアンハスキーで、今でも、私の部屋には彼の写真が飾ってある。

 その同じシベリアンハスキー犬を町工場からの帰り道で見かけることがある。

 夫婦らしき二人組に連れられて、商店街の歩道を歩くグレーにホワイトのシベリアンハスキー。同じ犬種だけあって、私の家で飼っていたワンコとそっくりである。

 のろのろと歩くその姿を見ていると、どこか懐かしく、それでいて、ちょっと切なくなってくる。

 もう、あの頃には決して戻れないのだと私は実感する。過去は見つめることはできるが、決して触れることはできない。

 ワンコを巡りながら、今日という日が終わっていく。