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 「私のこころを読んでみて」

 大学時代、心理学を専攻していたと私が話すと、その話を聞いた何人かは決まって、そんな風に言ってくる。

 正直、そのように返されると、私は困ってしまう。

 ただ、黙って私を見つめてくる目の前の人間のこころを読めと言われても、私はエスパーではないので、簡単に答えは出てこない。関西人に「何か、面白いこと、言って」とお願いするのと同じくらいの無茶振りだと思う。

 個人の何らかの行動に対して、その心理的要因を推測することはできるかもしれない。

 しかし、推測するにしても、相手からよく話を聞く必要がある。そして、導き出されたものはあくまで推測であって、それが正解とは限らない。

 私が心理学科を志望しようと思ったのは、それほど高尚な理由からではない。

 高校時代、たまたま聞いていたラジオから流れていた海外バンドの歌。そのヴォーカルをしていた男性が心理学を専攻していたと聞き、なぜか、その心理学という響きが格好いいなと思ってしまった。

 さらに、少数派を好むところが私にはあり、クラスで誰も志望していなかった心理学に白羽の矢が立った。

 でも、人間のこころを知りたいと思ったのも事実である。他人のこころもそうだが、もっと自分のこころも知りたいと私は思った。そして、もっと生きやすくなりたいと思った。

 一応、四年間、真面目には勉強したが、成果があったかと問われると微妙である。昔と変わらず、人付き合いは苦手だし、自分のこころも完璧には理解できていない。

 たぶん、人のこころというのは一生をかけて学んでいくものなのだろう。

 答えが出たり、出なかったり。その時々、迷いながら、私は自身の青春の忘れ形見と向き合って、生きている。
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