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 先日、町工場の仕事用に新しい靴を買った。

 仕事用なので、安くて、おしゃれではない靴でも十分なのだが、かといって、何でもいいわけにはいかない。

 インソールのクッション性。靴底の凹凸具合。靴ひもの形状。メーカー名を主張しすぎず、安っぽくない大人のデザイン。

 何軒かの店を何回も回り、自分なりの靴選びの基準に照らし合わせ、熟慮の末、一足を購入する。

 そして購入した靴は、すぐに下ろさないというのも私のルールである。

 箱に入れたまま、自分の部屋に置いておく。時折、箱から取り出し、新しい靴を眺める。そして、ひとりでニヤニヤする。

 そういう至福の時間を何度か経験した後、カレンダーで大安吉日を確認し、その日に靴を下ろし、履き始める。

 自分でも思うのだが、ここまでくると靴好きというより、靴変態の領域に入っているのではないだろうか。

 どうして、こんなに靴を偏愛してしまうのか、自分でもよく分からない。他の、たとえば服などは新しく買っても、すぐに一回、洗濯し、乾いたら、仏滅だろうが何だろうが、すぐに着始めるというのに。全くもって、自分の行動が謎である。

 ともあれ、きれいな靴を眺めているのは純粋に楽しい。新しい靴を買う予定もないのに、靴屋さんには時々、足を運ぶ。そして、きれいにディスプレイされた靴を眺め、ささやかなしあわせに浸っている。

 人間、ささやかな幸福があれば、いろいろあっても、何とか生きていけるような気がする。

 この世界に靴があって、本当に良かった。
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